映画館で絶対見る『No More映画泥棒』って誰が作ったの?耶雲監督に直撃インタビュー

大人のチャレンジ探究

中学生社長兼TANQ-JOB編集長の加藤路瑛です。

今回は映画監督・CMディレクターの耶雲哉治さんを紹介します。みなさんは耶雲監督、知っていますか? これを見たら「知ってる!」となると思います。

そうです!映画館でおなじみの『NO MORE 映画泥棒』のディレクターを担当されています。一度見たら忘れられない映像ですね。お名前も難しいので、「映画泥棒の監督」と覚えてしまったらバッチリです。本名は、耶雲哉治(やくも さいじ)さんです。

耶雲哉治さんはどんな人?

写真:株式会社ロボット(http://www.robot.co.jp/article/kumi/yakumo.html)より

耶雲さんは早稲田大学在学中に自主映画を撮り、東京学生映画祭グランプリ、JCF学生映画祭グランプリなど映画祭で数多く受賞されています。耶雲さんは株式会社ロボットに所属して映画やCMを作っています。

作品紹介

耶雲さんが監督を務めた映画を紹介します。

百瀬、こっちを向いて。(2014年)

MARS〜ただ、君を愛してる〜(2016年)

暗黒女子(2017年)

映画 刀剣乱舞(2019年)

 

加藤路瑛
なんか、映画監督ってすごそうだな。突撃インタビューだ!

耶雲哉治さんにインタビュー

耶雲監督が所属する株式会社ロボットさんの事務所に行ってきました!勝手にビルの1室のイメージでしたが、ビル丸ごとロボットさんの会社でした。

ミーティングルームで耶雲監督を待つ!(ドキドキ)

加藤路瑛
(心の声:来た!これがオーラってやつなのだろうか。そして、服が芸能人っぽい!)

よろしくお願いします。今日は、事前にご連絡していた質問事項をインタビューとしてお聞きしたいと思います。

耶雲監督
質問事項はもらったけどね、これだとアンケートみたいだよね。事前の質問項目はなしで、フリートークにしよう。会話の中から面白い話ができるかもしれない。
加藤路瑛
わかりました。では質問の紙は見ないでやります。

それでは、『No More映画泥棒』ってどうして作ろうと思ったのですか?耶雲監督が考えたのですか?

映画泥棒に迫る!

耶雲監督
映画泥棒って、誰があの映像を求めていると思う?求めている人がいたから頼まれた。シンプルに言えばそうなる。映画を盗撮したり違法ダウンロードして欲しくないなって思う映画を作る会社の人たちがいて、広告会社を通じて所属するROBOTに制作依頼がきて、僕が担当することになりました。

映画泥棒は「NO MORE映画泥棒」というメッセージもキャッチコピーも決まっていました。15秒や30秒でどう見せたら伝わるのか考えて、キャラクターを踊らせたいとか、黒い服着せたいな、とか、こんな音楽がいいな、っていうのは監督である僕が決めるけど、衣装も音楽も踊りもそれぞれ担当の人が具体的に作っていきます。

加藤路瑛
では、映画監督ってどこからどこまでが仕事なのですか?
耶雲監督
監督ってオーケストラの指揮者に例えることが多いのだけど、全部の楽器の音を聞きながら曲全体のイメージをまとめていく。もちろん、事前に音も演奏も打ち合わせを丁寧にたくさんやる。監督もそう、事前に色々な打ち合わせをして決めていって本番を迎えるのが仕事かな。
加藤路瑛
なるほど。では、CMと映画の違いって何ですか?
耶雲監督
うーん・・・なんだろうね。CMは15秒の枠の中で見た人がどう思って欲しいのか目的がある。買って欲しいとか来て欲しいとか。さっきの映画泥棒だと盗撮禁止ということを伝えたい。

映画は・・・目的が単純じゃない。だから長くなる。感想はいっぱいあっていいものだから。それが違いかな。

加藤路瑛
そういえば、今、映画館で上映されている『映画 刀剣乱舞』、僕も見に行ったのですが、映画泥棒が刀剣乱舞とコラボしてましたよね。あれは特権ですか?
耶雲監督
特権というか、『刀剣乱舞』も『映画泥棒』もよく知っている監督にしかできない無二の作品かもしれないですね。
加藤路瑛
それでは・・・映画監督になろうと思ったのはいつ頃なのですか?

映画監督への道

耶雲監督
子どもの頃は体が弱くて、学校を休むこともあったし、楽しみといえばテレビをみることくらいでしたね。テレビは面白い、作りたいと思ったけど、作り方なんて知りませんし、なんとなくそう思っていたくらいです。

僕は富山県出身ですが、子どものころは民放が2局しかなくて。なんとかアンテナを伸ばしたり工夫して、他県のテレビが見れた時は嬉しかったですね。それくらいテレビは好きだった。

大学で東京に来て、入学式の時に映画サークルに誘われて、なんとなくそのまま。

加藤路瑛
テレビ番組を作るサークルはなかったのですか?
耶雲監督
放送研究会がそれに近いかもしれないけど、僕には合わないくらい華やかでした。映画サークルは、みんな映画が好きで地味と言うか・・・居心地がよかったですね。

でもね、僕は高校まで映画館なんて近くにないし滅多に行かなかったんです。でもサークルのメンバーは「フランス映画は・・・」とか「イタリアのあの監督が・・・」ってとにかくマニアックで、こんな世界があることにびっくりしました。

サークルに入って自主制作映画というものを知って、先輩たちが自分でカメラまわして、こんな風にして映画ができていくんだって感動して・・・。大学を卒業する前に自分も作りたいと思って、映画のコンテストに出したら・・・グランプリをいただきました。

大学生で映画コンテストで賞を取っちゃうと「俺は映画の世界で行きていくんだ!」ってなって、就職しない人が多いのですが、僕の場合、映像は好きだけど映画監督になりたかったわけではなく、就職活動をして映像全般を作っているこの会社に入りました。

加藤路瑛
それじゃ、サラリーマンの監督?
耶雲監督
そう。だから安定している(笑)。会社員の監督は少ないと言えば少ないけど、例えばテレビ局。ドラマ作っている監督の中にはテレビ局の社員もいます。映画監督で会社員は確かに少なくて、個人事業主だったり、監督自身で会社を作っているケースが多いかな。会社員の映画監督は、安定しているけど、映画が大ヒットしても給料は大幅には増えない(笑)
加藤路瑛
『映画 刀剣乱舞』、大ヒットしてますよね?映画監督になりたいわけではなかったのに、映画監督になってしまったのは何かきっかけがあるのですか?
耶雲監督
もともとロボットという会社は映画を作る会社ではなくて、CMなどの映像制作の会社でした。できて30年くらいの会社ですが、初代の社長の口ぐせが「じゃあ、やってみなよ」で。やってみるということが大事だと思っている会社なんです。

僕も自分がやることはこれだと決めつけずに、人から頼まれたり勧められたことでもなんでも試してみたいと思っています。その方が面白いことに出会えるんじゃないかと。映画監督になったことも自分を試したりチャレンジしたいという思いが強いんだと思います。もちろん今まで失敗はたくさんしましたが、あまり後悔はなくて勉強になることが多かったですね。

加藤路瑛
それでは、会社に入ってからの耶雲監督の一番の失敗って何ですか?
耶雲監督
入社して1年目にCMを作る現場で先輩の監督から「(15秒CMの)1カットだけ撮ってこい」と言われて、ある有名人の所に行きました。一言もらうだけだったのですが、熱が入ってしまって、「もっと、こう言ってください」「もっと大きく」など何度も撮り直しをしてしまって、とても怒らせてしまったことがあります。

撮られる側の立場になって、どのように伝えれば動いてくれるのか考えるべきでした。「どうしてそれをやって欲しいのか」「そうやってくれるとどのような効果があるのか」を伝える重要性を学びました。

加藤路瑛
失敗から学んだということでしょうか。

インタビューだったけど、若者向けの深イイ話に

耶雲監督
そうですね。若いうちに失敗はしたほうがいい。大人の失敗は大怪我になることがあるから。
加藤路瑛
それ、大人によく言われます。
耶雲監督
若いうちに大怪我しない程度の失敗はたくさんしておくといいと思いますが、「若いうちは・・・」って大人が言うのは子どもをなめている部分があると思います。子どもがビジネスの場に来たら、やっぱり傷つけないようにと大人は気を使うよ。だから、結局、ビジネスの深い話はできないし、そういう経験を加藤くんもして来たんじゃないかな?

じゃあ、大人からなめられないようにするには、ボールを投げることです。

加藤路瑛
ボール・・・ですか?
耶雲監督
そう。斬新な意見や、鋭い意見を大人に投げかけて、ひやっとさせる。

若者を応援できるのは業種が違う時であって、同業だったら大人も焦りはある。大人が「若いって素晴らしい」と絶賛したりするけど、あれは若い才能を潰す罠だから笑。これからの時代は、アイディアも共有していくのがいいとは思いますが、才能ある若者とアイディアは共有しようと言う大人もいるけど、本当にできる人は少ないかもしれない。

加藤路瑛
今、中学生に戻れるとしたら何をしたいですか?
耶雲監督
考えた事なかったな・・・そうですね、たくさん本を読むと思います。知識を得ようと思うかな。
加藤路瑛
映画監督や映像関係の仕事をしたい若者にメッセージをお願いします。
耶雲監督
何にでも興味を持ってください。映像だけ勉強してもダメ。面白いと思ったこともそうでないこともどんどんやってみる。全然関係ないことをやっているようで、それが映画や映像に繋がることもあります。ですから、自分はこうだと決めつけずに想像もしてなかったワクワクすることに出会って欲しいです。

終わりに

このようにインタビューをまとめると原稿なしのアドリブインタビューのわりには上手くできているように見えてしまうかもしれませんが、反省点いっぱいでした。自由に話すインタビューになったのですが、思い出せば自分のことばかり話してしまっていたのです。自分の学校のことや、猫が好きなことなど。話題に出たり質問されたから話したのですが、

耶雲監督
自由に話して、自分の意見なども入れるととてもいいのですが、話しがそれてしまっても、最後にはインタビューのテーマに戻すともっと良くなるよ。

とアドバイスをもらいました。僕が話したのは世間話しや自分語りです。それで終わったらインタビューではなくなってしまう。だから、最終的には、インタビューのテーマに戻る。耶雲監督のインタビューなら必ず映画の話題に戻せばよかったのです。勉強になりました。

耶雲監督
大人みたいな質問はいらないからさ、大人が聞けないようなこと聞けばいいと思うよ。大人でいい質問なら、大人の方がいいインタビューできちゃうから。たとえば、「年収いくらですか?」とか、大人は絶対聞けないから。

これまでいろんな大人の方に会ったりインタビューさせてもらった時に、「インタビュー相手も忙しいから事前に質問を考えて、今回はこれを質問しますと先に送っておく方がいいよ」というアドバイスをもらっていて、そのようにしていましたが、自由なインタビューを望む人もいるので、どのような相手でも対応できる能力が必要なのだと思いました。

耶雲監督、貴重なお話をありがとうございました。今まで経営者や会社員の方ばかりとお会いしてきたので、映画監督とお話できて今までとは違う意見が出て面白かったです。今度は、もっとインタビューのレベルもあげて、また取材したいです!