「中学生社長が80万円かけて取り組んだ18歳以下限定のクラウドファンディング事業」の実験レポート(前編)

探究&実験レポート

こんにちは。中学生社長の加藤路瑛です。2019年7月23日、18歳以下専用クラウドファンディング『Crystalroad』のβ版のサイトを公開しました。それから4ヶ月後の11月23日、『Crystalroad』は正式リリースすることなく終了させることにしました。

クラウドファンディングのプラットフォームを作ろうと思い立ってから8ヶ月間に一体どのようなことが僕に起きていたのか裏舞台も隠すことなくお伝えします。

「言い訳はしなくてもいい」と思う人もいると思いますが、失敗も試行錯誤も苦い経験も全部伝えることで、「失敗してもOK」という価値観が広がればと思います。(正直に言えば、半分は言い訳ですが)

クラファン事業では、本当にうまく進まないことが多かったですし、人を見る目やパートナーとして組む相手を選ぶ基準、契約の怖さ、伝え方の難しさなど色々な学びになりました。

「ここまで書いていいのかな?」のギリギリの部分まで書きます。

クラウドファンディングの事業をしようと思ったきっかけ

僕は中学1年生の時に起業を決意しました。その時に考えたビジネスモデルは「やりたいことがある子どもにスポンサーをつける」というものでした。

↑2018年6月、はじめて作った事業計画書に書いたビジネスモデル

スポーツ選手にスポンサーがついているように、頑張っている子どもにスポンサーになってくれる会社があるのではないかと思ったのです。

↑ 2018年7月-8月頃の事業計画の資料に書いたビジネスモデル

少しビジネスアイディアを進化させました。やりたいことがある子どもを「起業」分野に絞って、スポンサーや月額支援のファンクラブ、メンター募集できるサイトです。僕にとっては完璧なアイディアですが、誰に説明しても否定的でした。

・そもそも起業したい子どもはいない。何人いるのか調べたのか?
・子どものスポンサーになりたい大人や会社はいない

というものでした。僕はこのビジネスアイディアでクラウドファンディング するつもりでしたが、あまりにも大人のリアクションが悪くて、一旦このビジネスアイディアを保留にさせました。

絶対に個人にスポンサーは付く時代になると思っていました。その時代を僕が作ろうと思っていました。でも、今、取り組むのは早いのかもしれない。そう思って、多くの人が理解しやすい、メディア運営を最初にやることにしました。

メディア運営の実験レポートも是非ご覧ください。

子どもの挑戦にはお金は必要

何かやりたいと思った時の壁になるのが、「子ども」という年齢の壁と「お金」のなさという壁です。僕にとって、この問題を解消できる仕組みを作ることが自分の役目だと思っていました。ただ、そのやり方が分からない。

そんなある日、「このプロジェクトをなんとかしてあげたい」とご連絡をいただきました。そのプロジェクトとはこれです。↓

https://camp-fire.jp/projects/view/112249

(いつも参考資料として利用させていただき、ありがとうございます)

中学生が立ち上げたプロジェクトで、目標金額は100万円でした。支援者の方が何とかしてあげたいと僕に連絡くださったのです。

その時、小中高生のクラウドファンディング の状況を調べてしましたが、多くの学生のプロジェクトが目標金額に達成できていませんでした。それどころか、支援金0円や1、2万円というものも少なくありませんでした。

せっかく勇気を持ってクラウドファンディング に挑戦しているのに、フォローしてくれる人がいなければ、その小さい声は大量にあるクラウドファンディング のページの中で埋もれてしまう。

何かサポートが必要だ!そう思って、「中高生向けのクラウドファンディング 講座」というnoteを書きました。購入者数名と実際にアドバイスまでさせていただいたのは2名。その実験結果はまた今度レポートしようと思います。

もう僕がやるしかない

noteでクラファン講座を書いても解決策にはならない。そうやっているうちに、また中高生がプロジェクトを立ち上げ、1万円くらいの支援で終わってしまっていく・・・

2019年2月16日、僕は思い切って、CAMPFIREの社長、家入さんのTwitterにDMします。

相互フォローになっているので、もしかすると見てくれることがあるかもしれないという淡い期待です。返事がなくても仕方がないとダメモトで送りました。

残念ながらお返事はありませんでした。これは、自分で動けというお告げだろうと思い、自分でクラウドファンディングの事業をやることを決意します。

2019年3月1日、僕は決意してしまいます。18歳以下専用のクラウドファンディング のプラットフォームを作ろうと。

その後、3月25日、CAMPFIREは10代を中心とした若年層の事業立ち上げやアイデア実現などの挑戦を応援する取り組み「CAMPFIRE YOUTH」を発表されました。CAMPFIREがやるなら、僕がやらなくてもいいかもしれないという気持ちもありましたが、やろうと思ったのなら、まずは納得できるまでやってみようと思いました。

これが、本当に苦しいことというより苦い経験が多くなってしまったのですが、今回の実験レポートは、僕が18歳以下専用のクラウドファンディング サイトを立ち上げた実験レポートです。長い話になりそうです。ここまでの前置きすら長い。

クラウドファンディングのプラットフォーマーのなり方

まず、法律でクラウドファンディング の事業が僕の会社でできるのか調べました。お金を集めてプロジェクトオーナーに渡す事業です。金融法や資金移動業の登録が必要なのか調べました。

とりあえず、「購入型」のクラウドファンディングでは法律面は問題なさそうでした。購入型というのは、支援をする代わりにリターンがあるというものです。つまり、寄付や資金移動ではなく、「何かを購入してそのお金を払う」という買い物と同じ仕組みなのです。仮にそのリターンが「お礼を伝える」だとしても、売買は成立しています。

僕の会社でもクラウドファンディング事業ができることがわかったので、今度は仕組み作りです。クラファンのサイトをゼロから作ると1000万円以上かかると言われました。

そんなにお金はかけられないので、安くやれる方法を探していました。方法は3つありました。

1)クラウドファンディング事業をしている企業にシステムを利用させてもらう
2)クラウドファンディングシステムのレンタルを利用する
3)クラウドファンディングシステムのパッケージを買ってカスタマイズする

僕はお金がかからない順に1)2)3)の順番で調べていきました。

1)クラウドファンディング事業をしている企業にシステムを利用させてもらおう

クラウドファンディング はCampfireやReadyForなどが有名ですが、実はたくさんクラウドファンディングのサイトがあります。僕は10社くらに「御社のシステムを利用させていただけないか?」とメールを送りました。全滅でした。

ただ借りるだけでなく、相手のメリットを伝えることはできませんでした。もちろん、手数料や利用料を払うつもりでいましたが、見合うだけのお金を僕から回収できるとは思えなかったのだと思います。メールでお問い合わせしている状態では信頼関係もない状態ですし。

2)クラウドファンディングシステムのレンタルを利用する

クラファンサイト、実はレンタルしている企業がいくつかあります。登録費がかかる会社もあれば、0円でやれるものもありました。0円最高です!ただ、支援金があった場合に手数料を取られる仕組みですが、その手数料が9%でした。小中高生向けのクラファンなので、手数料は10%くらいにしたい。9%だとクリスタルロードに入ってくるお金はない。手数料が高ければ、僕の会社でクラファンするメリットはなくなってしまう。

さらに、月額支援コースのようなものは提供されいなく、All-in型のみのようでした。これでは、やりたいことから離れてしまうのです。一般的なクラファンの他に、ファンクラブのように毎月支援できる仕組みも欲しいのです。

助け船?

そんな時に、「協力できますよ」と海外に住む方からご連絡がありました。僕のTwitterを見てくれたようでした。いくつかクラウドファンディングの事業をコンサルして提供しているということでした。

ビデオ通話などで打ち合わせをしました。まず、クラウドファンディング事業はクレジット会社の審査がおりにくいと言われました。All-or-Nothing型では目標金額に達成できなかったら支援者に返金されます。そのような仕組みにはクレジット会社は慎重だと言われました。でも、その部分も協力できると言われました。

僕が希望するようなサイトにカスタマイズするのに100万円くらい。手数料は支援金の9%ということでした。

僕は、ゼロから作るなら1000万円かかるのなら100万円くらいならいいかなと思いました。そして、手数料9%もこの業界の普通なのなら受け入れようと思いました。その代わり、クリスタルロードとしての手数料は15%にしようと思いました。僕は、「小中高生のために手数料が安くて支援されやすいクラウドファンディング」を作ろうと思っていたはずなのに、この人にお任せすればいいと思って自分で工夫してやることをすっかりできなくなっていました。

業務委託契約書を結ぶことになり、契約書を見てびっくりしました。そこには、全く知らない会社の名前が書かれていました。質問してみると、相手の方は海外にいるので、日本にいる知り合いの会社と書類上は契約することになる。海外のパートナーと仕事をする場合、よくあることですよ。という説明でした。僕も他の人に聞いて見たら、そういう契約はあると言われました。ただ、僕が気乗りしないならやめたほうがいいとアドバイスをもらいました。

僕は知らない会社と契約するのは嫌だと思いました。住所をGoogleで調べたら普通の家っぽい感じでした。「この会社の人とお会いしてから契約したいです。」と返事をしました。すると、「それなら、個人契約でいいですよ」と言われました。僕は、このまま契約していいか分からなくなりました。母も正解が分からないから、僕の判断でいいと逃げました。そして僕は、契約しない判断をしました。

お断りした時に、100万円でクラファン事業ができるのは安いのにもったいないことや、手数料9%を高いと言うけどそれが普通だということや、今まで契約でこんなことを言われたことがないことなどを少し怒られた感じで言われてしまいました。

確かにそうかもしれない。でも、僕が感じた違和感を無視できなかったのです。(時間を使っていただいたのにすいませんでした。)

3)クラウドファンディングシステムのパッケージを買ってカスタマイズする

残る選択肢は「パッケージを買うこと」でした。海外の方とのやり取りで100万円くらいの予算は普通という感覚になっていた僕は、100万円以下で購入してカスタマイズまでできそうなパッケージを探しました。

そして見つけました。機能は僕が求めていたものが全て揃っていました。月額のファンクラブも作れそうでした。

僕と母はその会社に会いに行くことにしました。海外のように会えないまま契約するのは嫌だと思ったのです。100万円は僕にとって大金を投資してやる事業でした。だからどんな会社なのか見に行きたかったのです。結局、会社には行けず、カフェで打ち合わせになりました。

僕にとってこだわりたい部分もあったのでカスタマイズしてもらうことにして、60万円をその会社に払い、クラウドファンディング事業をすすめることにしたのです。

60万円なら、すぐに回収できると思ったのです。

ほぼカスタマイズも終わり、決済の部分の設定の終わり、もう直ぐ完成するということで仮のプロジェクトを作って、決済もして、どういう流れでメールが来るかなどテストしました。順調でした。

想像していたものと違う・・・

でも、気が付いてしまいます。「このシステム、自分でプロジェクト作れない!」

CAMPFIREなどは、ユーザーが会員登録をしたら、自分でプロジェクトを作成できます。タイトルを入れ、写真や動画を入れながら自分のやりたいことを文章で伝えて行きます。リターンも自分で作成していきます。クリスタルロードのクラファンサイトでは、ユーザーが自分で作ることができず、管理者(つまりクリスタルロード)がプロジェクトを入力していくのです。昔のCAMPFIREもそうだったと言われてしまいます。

僕は思わず、「すいません。今、想定していたプラットフォームと違っていたことに動揺しています。プロジェクト起案者が自由に作れないクラウドファンディングは、プラットフォーマーではないです・・・」とチャットワークでコメント入れてしまいました。

この言い方が相手の方を怒らせてしまったようでした。会いに行ったときもそのような説明はありませんでした。CAMPFIREのようなプラットフォームを作れるという説明でした。ホームページの説明も読んでみましたが、これで理解できる人はいないのではないかという説明でした。僕の方が怒りたい気持ちなのに、めちゃくちゃ怒られます。

もらったメールをまとめると

・不便すぎるとか、プラットフォーマーじゃないとか、なんだそれって感じですな。
・昔、なんでも起案者が登録できて、審査もないサイトが一瞬できあがりましたが、カオスで一瞬で終わりましたよ。
・もし全てを起案者が編集できるのがプラットフォームとしてごくごく当たり前だというのであれば、まっとうなプラットフォームとして、当然ながら「審査」の仕組みと、「編集可能な箇所とタイミング」について、非常に細かく規定されているべき。そういった確認も合わせて購入前にするべき。
・ビジネス的ないけてなさが強すぎてはんぱないっすね。
・こんないけてない人は、世界中のビジネスマン探してもいないと思いますよ。 以上です。 
・何様なんですかね?
・ただただ超絶的に生意気であり、私の製品を上から目線で断定的にdisってますねこれは笑

というような内容のメッセージをもらいます。(全文公開したいくらいなのですが、相手の著作物なので一部を掲載しています)

恨んだりはしていないですし、もうお金をかけているので、この現状でどう対策をすればいいかを話し合いたかったのに、相談できるような関係ではなくなってしまいます。

僕はCAMPFIREしか利用していませんが、RedyForも会員登録して流れは把握していました。プロジェクト起案者がプロジェクト作成をし、運営会社がプロジェクト内容を審査し、修正などをアドバイスしてOKになったら運営会社が公開設定をする。これが普通だと思っていました。これが普通ではない世界があることを知れたのはとても勉強になりました。

僕の言い方もよくなかったのだと思いつつ、建設的な話し合いができない状況でした。仕事の世界で、商品やサービスの話で衝突することはあると思いますが、そこから離れて個人の人間性の部分を否定する人がいることも知ることができました。

そして、エンジニアやクリエイターさんの作ったものを否定してしまうような発言は注意しようと思いました。その人にとっては自分の子どもみないなものなのですから。

13歳の僕の精神には結構きつい経験でしたが、そのおかげて学べたこともあったと思います。

(やりとりを全文公開すると長くなるので省略しました。特に自分の不都合な発言を載せないようなことはしていないつもりですが、一部抜粋なので全てをお伝えできずすいません)

一人になって

パッケージ販売されていた会社の方とは残念な終わり方をしてしまいましたが、クラウドファンディング 事業はまだスタートにすら立てていません。

プロジェクト起案者になる小中高生が自分でプロジェクト作成できないならば、どうやってやりたいことを僕に伝えてもらうかがポイントになります。その部分が解決できれば、僕が画像や動画や文章をもらって、それをプロジェクト作成ページにコピペしていけばいいのですから。

Googleドキュメントでプロジェクトを作ってもらい、それを共有ファイルにして小中高生とクリスタルロードで編集しあって完成させる。それを僕が管理画面でプロジェクトを作成し公開すれば問題は解決できそうでした。

逆にドキュメンでやり取りできるのはいいと思いました。Campfireでは、修正ポイントをメールで連絡いただきますが、メールを読んで、どこの部分の指摘なのか探して修正して、修正した連絡をメールでするのはとても複雑でした。

googleドキュメントなら、コメント機能や編集の提案もできるので便利です。最終的には、Googleドキュメントの共有ではなく、DropBox paperで共有することにしました。DropBox paperは便利で、良い発見ができたと思います。

思い描いた形と違う時に、どう修正して、どうすれば前の状態よりよくなるのか考えればいいのだと思いました。

もう一つの問題は、プラットフォームのカスタマイズが終わってなかったことです。致命的です。ここで母が、カスタマイズをお願いできる人を見つけてくれて、その方に細かい修正をしていただきました。

もうエンジニアの方と関わるのが嫌になっていたので、主に母に対応してもらうことにしました。とても丁寧な方のようで、希望通りに、それ以上に対応くださる方でした。その方のおかげて、なんとか公開して運用できるところまでたどり着くことができました。

この部分で僕は完全に無力でした。

これらの出来事は、ちょうど僕が出版クラウドファンディング EXODUSに出ていた頃の出来事です。自分のクラファンを表でやりながら、裏では自分のクラファンサイトがうまく進まず、2019年6月は絶不調な時期でした。

ここまでが、前編です。後編は、クラウドファンディングサイトのβ版をリリースした後に起きた話です。前編に出た、ブチギレされてしまった会社ともう一度連絡を取ることになります。

↓後編はこちら